ここに描かれているものはゴジラに似ています。 体の肉付きは硬い癌細胞のようで、足の指は繋がり、爪の無い掌は人のものに似ています。眼は一つしか無く、まぶたはありません。背びれも白み、歪んでいます。光に照らされても、伸びる影すら薄いです。描くにあたっては「突然変異体・未熟児・忌子・発癌性腫瘍」の要素を重視しました。タイトルは「ゴジラではない」となっていますが、タイトルにはいくつか候補がありました。 「ゴジラじゃない」「ゴジラにあらず」「ゴジラではない者」などです。 ですが、ゴジラじゃないと書きますと「あら、ゴジラじゃないの」という感じに可愛らしくなってしまいますし、ゴジラにあらずと書きますと、妙な品や格式のようなものを与えてしまい、人格や意思を想像させ、やはり可愛らしくなってしまいます。ゴジラではない者と書くのも、者と呼ぶことによって、先のゴジラにあらずと同じような可愛らしさを生んでしまうでしょう。 ですので、作品名は「ゴジラではない」に決まりました。 １９５４年の黒雲の下で、ゴジラになれなかったのです。

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